朝6時の開店に合わせて、店主・中村雅夫さんのパン作りは前日の夜から始まる。
「お客さんが喜んでくれるから」と期待に応えた結果、あんパン、揚げパン、バターロール、デニッシュとパンの種類は増え続けたが、どんなに効率が悪くともいろんな種類を少しずつ焼くのが信条。
生地の仕込みだけでも10種類近く、笠岡市北部にある『坂本産業』の卵を使ったカスタードクリームやサンドイッチのマヨ玉子などのフィリングもできる限り手作りしている。
なかでも看板は食パンで、袋に描かれた赤いピエロは笠岡では知らない人がいないほどの有名人。
毎朝欠かさず食べるという地元民、モーニングやサンドイッチに使っている喫茶店も多く、1本、2本と大量の食パンを持ち帰るおなじみさんがひっきりなしに訪れる。多いときは1日に何度も食パンを焼くこともあるとか。
「ウチのパンは変わりばえがせんよね」と笑うのは奥様の久子さん。材料は小麦粉、砂糖、塩、バター、イースト、水のみで、40年以上同じ製法。
変わらないまっすぐなおいしさこそが、日々の暮らしに寄り添ってきた証だ。
「あと何年がんばれるかなぁ」と二人は言うけれど、ここのパンがない毎日なんて考えられない。体に気をつけて、どうかいつまでも変わらないパンを焼き続けてくれますように。